副業の経費はどこまで認められる?【2026年版】家事按分・領収書の基本

副業の経費はどこまで認められる?【2026年版】家事按分・領収書の基本

※本記事は2026年10月時点の情報です。制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。

副業で収入が出はじめると、多くの会社員が「経費」について次のような疑問を持ちます。

  • パソコンやスマホ代、家賃は副業の経費にしていいのか、どこまで認められるのか知りたい
  • 自宅で作業している場合、家賃や電気代をどう分ければいいのかわからない
  • 雑所得と事業所得で経費の扱いが違うのか、20万円ルールとの関係も気になる

結論から言うと、副業の経費にできるのは「副業の収入を得るために必要だった支出」のうち、業務に使った部分を合理的に説明できるものです。私生活と共用している支出は、使用割合に応じて分ける「家事按分」で計上します。

この記事では、経費の基本的な考え方、経費にできるもの・できないものの一覧、家事按分の計算例、10万円・20万円・30万円の金額ごとのルール、領収書と帳簿の保存、雑所得と事業所得の違いまでを整理します。確定申告の全体像は副業の確定申告(20万円ルール)の記事もあわせてご覧ください。

この記事でわかること

  • 副業の経費として認められるかどうかの判断基準
  • 経費にできるもの・できないものの具体例(一覧表)
  • 家賃・通信費などの家事按分の考え方と計算例
  • パソコンなど備品を買ったときの10万円・20万円・30万円のルール
  • 雑所得と事業所得で経費・赤字の扱いがどう違うか
目次

副業の経費とは?基本の考え方

所得税では、副業の所得は「収入−必要経費」で計算します。必要経費とは、その収入を得るために直接かかった費用や、業務を続けるためにかかった費用のことです。つまり、経費になるかどうかの判断軸は「いくら使ったか」ではなく「副業の業務と関連があるか」です。

判断基準は「業務との関連性」と「説明できるか」

同じ支出でも、副業の内容によって経費になるかどうかが変わります。たとえば、Webデザインの副業をしている人がデザイン書籍を買うのは業務との関連が明確ですが、副業と無関係な趣味の本は経費になりません。判断に迷ったときは、次の3点を確認しましょう。

  • その支出がなければ副業の収入を得られなかった、または業務に支障が出たか
  • 私生活での利用と区別できるか(区別できない部分は家事按分する)
  • 領収書や記録で、第三者に業務のための支出だと説明できるか

経費を引くと「20万円ルール」の判定も変わる

給与を1か所から受け取り年末調整を受けている会社員は、給与以外の所得が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1900)。この20万円は売上ではなく「収入から経費を引いた所得」で判定します。たとえば、副業の売上が30万円でも必要経費が12万円なら所得は18万円です。

ただし、20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要です。また、医療費控除やふるさと納税(6自治体以上に寄附した場合など)のために確定申告をするなら、副業の所得も含めて申告しなければなりません。経費を正しく計上することは、税額だけでなく申告が必要かどうかの判断にも関わります。

副業の経費にできるもの・できないもの一覧

ここでは、会社員の副業でよく出てくる支出を「経費にしやすいもの」「按分が必要なもの」「経費にできないもの」に分けて整理します。あくまで一般的な考え方で、実際に経費になるかは副業の内容と使用実態で判断します。

経費にしやすいもの・按分が必要なもの

費用の種類具体例扱いの目安
仕入・外注費物販の仕入代金、デザインの外注費業務に直接必要なら経費
支払手数料ココナラ等のプラットフォーム手数料、振込手数料業務分は経費
消耗品費文房具、USBメモリ、10万円未満のソフト業務用なら経費
新聞図書費業務に関係する書籍、有料記事、業界誌業務との関連が明確なら経費
研修・セミナー費副業スキルに直結する講座の受講料業務との関連が明確なら経費
旅費交通費打ち合わせや取材に行く電車代業務目的の移動なら経費
通信費スマホ料金、インターネット回線私用と共用なら按分
水道光熱費自宅作業の電気代私用と共用なら按分
地代家賃自宅の一部を作業場として使う場合の家賃業務で使う部分を按分
減価償却費パソコン、カメラなど10万円以上の機材金額に応じたルールで計上

経費にできないもの

次のような支出は、副業をしていても原則として必要経費になりません。

支出経費にならない理由・扱い
所得税・住民税所得にかかる税金そのものは必要経費にならない
国民健康保険料・国民年金保険料必要経費ではなく、社会保険料控除の対象
罰金・科料・交通違反の反則金業務中であっても必要経費にならない
私的な飲食・衣服・日用品業務との関連がない生活費
本業(会社員)のための支出給与所得の経費は給与所得控除で考慮されている
生計を一にする家族への支払い原則として必要経費にならない(青色事業専従者給与などの例外あり)

特に注意したいのが「本業のための支出」です。たとえば会社の業務で使うスーツや通勤のための費用を副業の経費に入れることはできません。会社員の給与には給与所得控除があり、本業の経費はそこで概算的に差し引かれていると考えるためです。

判断が分かれやすいグレーゾーン

交際費、カフェでの作業代、趣味と重なる機材などは、業務との関連を説明できるかどうかで扱いが変わります。たとえば、取引先候補との打ち合わせの飲食代は業務との関連を説明しやすい一方、友人との食事は経費になりません。「誰と・何のために」を領収書の裏や帳簿のメモに残しておくと、後から説明しやすくなります。

家事按分の考え方と計算例

会社員の副業は自宅で行うことが多く、家賃、電気代、スマホ代など私生活と共用する支出がたくさん出てきます。こうした支出を業務分と私用分に分けて、業務分だけを経費にするのが家事按分です。

家事関連費は「業務に必要な部分が明らかに区分できる」ことが前提

私生活と業務の両方に関係する支出は、税法上「家事関連費」と呼ばれます。家事関連費のうち必要経費にできるのは、業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合のその部分に限られます(国税庁タックスアンサーNo.2210)。つまり、なんとなく半分を経費にするのではなく、使用時間・面積・使用量など、根拠のある基準で割合を決めることが必要です。

按分の基準の例

支出按分の基準の例記録しておくもの
家賃作業スペースの床面積の割合、使用時間間取り図、作業時間のメモ
電気代使用時間の割合、使用する家電作業日・作業時間の記録
スマホ・通信費通話・データの業務利用の割合利用明細、使用時間の目安
インターネット回線業務で使う時間の割合作業時間の記録
自家用車走行距離のうち業務で走った割合走行記録(日付・行き先・距離)

按分の計算例(例示)

以下は計算方法をイメージするための例です。実際の割合は、ご自身の使用実態に合わせて決めてください。

例1:家賃(月8万円、50㎡の住まいのうち10㎡の部屋を作業部屋として使用。ただし作業部屋は副業の時間帯以外は私用でも使う)

  • 面積の割合:10㎡÷50㎡=20%
  • 作業部屋の業務使用割合:私用と半々と考えて50%
  • 経費にする割合:20%×50%=10%
  • 経費額:8万円×10%=月8,000円(年9万6,000円)

例2:スマホ代(月6,000円、副業での利用を全体の3割と見積もる場合)

  • 経費額:6,000円×30%=月1,800円(年2万1,600円)

会社員の副業は、本業の勤務時間や生活時間のほうが長いのが一般的です。フリーランスと同じ感覚で高い割合を設定すると、実態と合わなくなるおそれがあります。平日の夜と週末に作業しているなら、その時間に見合った割合にしておくのが無難です。

家事按分で注意したいポイント

  • 按分の根拠(計算式と考え方)をメモにして保存しておく
  • 一度決めた割合は、使用実態が変わらない限り毎年ころころ変えない
  • 持ち家の場合は家賃ではなく、建物の減価償却費や住宅ローンの利息部分などで考える(住宅ローン控除との関係にも注意)
  • 同居家族の名義で契約しているものは、誰が負担しているかを確認する

10万円・20万円・30万円|パソコンなど備品を買ったときのルール

パソコンやカメラなど、長く使う備品を買ったときは、金額によって経費への計上方法が変わります。会社員の副業でよく問題になるので、整理しておきましょう。

取得価額主な処理方法使える人
10万円未満購入した年に全額を経費(消耗品費など)誰でも
10万円以上20万円未満一括償却資産として3年間で均等に経費化(通常の減価償却も選べる)誰でも
30万円未満少額減価償却資産の特例で購入年に全額経費(年合計300万円まで)青色申告の中小事業者
上記以外耐用年数に応じて減価償却(例:パソコンは4年)誰でも

少額減価償却資産の特例は、青色申告をしている中小事業者向けの制度です。白色申告の人や、帳簿を付けていない雑所得の人は使えません。なお、令和8年度税制改正により、この特例の対象は令和8年4月1日以後に取得する資産について40万円未満に引き上げられ、適用期限も延長されています(中小企業庁「少額減価償却資産の特例」パンフレット)。個人で適用できる年分や細かな要件は、最新の国税庁の情報で確認してください。

確定申告の「20万円ルール」とは別物

「20万円」という数字は、確定申告の要否を判断する「給与以外の所得20万円」と、一括償却資産の「取得価額20万円未満」の2つで登場しますが、まったく別のルールです。前者は1年間の所得の合計、後者は1つの資産の購入金額の話です。混同しないようにしましょう。

業務と私用で使うパソコンも按分する

副業専用ではなく、私用と共用のパソコンやスマホ本体を購入した場合は、経費化する金額にも業務の使用割合を掛けて計算します。たとえば15万円のパソコンを業務で5割使うなら、経費化の対象になるのは使用割合に応じた部分です。

領収書と帳簿の保存ルール

経費を計上するなら、その支出が業務のためだったと示せる記録を残しておくことが欠かせません。税務署から問い合わせを受けたときに説明できなければ、経費として認められない可能性があります。

残しておきたい記録

  • 領収書・レシート(日付、支払先、金額、内容がわかるもの)
  • 請求書・納品書、プラットフォームの売上明細や手数料の明細
  • クレジットカードや銀行口座の利用明細
  • 家事按分の根拠メモ(面積、使用時間、計算式)
  • 交際費などは「誰と・何の目的で」のメモ

副業用の銀行口座やクレジットカードを分けておくと、私用の支出と混ざらず、帳簿付けも格段に楽になります。

保存期間の目安と電子データの扱い

帳簿や書類の保存期間は、申告の種類や書類の種類によって5年または7年と定められています。区分ごとに覚えるのが難しい場合は、副業の書類はまとめて7年保存しておくと安心です。また、ネットで受け取った領収書やPDFの請求書などの電子取引データは、電子帳簿保存法により原則として電子データのまま保存する必要があります。紙に印刷するだけで済ませず、日付・金額・取引先で検索できる形でフォルダ管理しておきましょう。

業務に係る雑所得でも書類保存が必要になる場合がある

副業が雑所得の場合でも、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、請求書や領収書など現金預金取引等関係書類の保存が必要です。また、1,000万円を超える人は確定申告書に収支内訳書の添付が必要になります。規模が小さいうちから記録を残す習慣をつけておくと、収入が増えたときも慌てずに済みます。帳簿付けの負担を減らしたい方は記帳代行の活用も選択肢です。

雑所得と事業所得で経費の扱いはどう違う?

副業の所得は、内容や規模によって「雑所得」または「事業所得」に区分されます。経費を差し引けること自体はどちらも同じですが、赤字の扱いや使える特例に大きな違いがあります。

所得区分の判定は「社会通念」で行う

令和4年10月の所得税基本通達の改正により、事業所得か雑所得かは、その所得を得るための活動が社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するとされました。帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得として扱われます(収入金額が300万円を超え、事業と認められる事実がある場合などは除く)。よく見かける「300万円以下は一律で雑所得」という説明は正確ではありません。

雑所得と事業所得の比較

比較項目雑所得(業務)事業所得
経費の計上できるできる
赤字の損益通算給与所得など他の所得と通算できない給与所得など他の所得と損益通算できる
青色申告特別控除使えない青色申告の承認を受ければ最大65万円(要件あり)
少額減価償却資産の特例使えない青色申告の中小事業者なら使える
赤字の繰越できない青色申告なら純損失を3年間繰り越せる
帳簿の記帳原則義務なし(規模により書類保存義務あり)記帳・帳簿保存が必要

特に重要なのが損益通算です。雑所得で経費が収入を上回って赤字になっても、その赤字を給与所得と相殺して税金を取り戻すことはできません。「副業の赤字で本業の税金が戻る」という話は、事業所得として認められる場合に限られます。経費を増やして赤字にすれば節税になる、という単純な考え方は危険です。

青色申告特別控除は、65万円(複式簿記とe-Taxなどの要件を満たす場合)、55万円(複式簿記・書面提出)、10万円の区分があり、令和8年度改正では令和9年分以降の見直しも予定されています。事業所得として青色申告を検討するなら、副業で開業届を出すべきかやフリーランスの節税の記事も参考にしてください。

経費計上でやってはいけないことチェックリスト

経費は所得を減らす分、税務上のチェックも入りやすい部分です。次のような計上は避けましょう。

  • 実際には支払っていない架空の経費を計上する
  • 私的な旅行・食事・買い物を業務と偽って計上する
  • 実態とかけ離れた高い按分割合(例:会社員なのに家賃の大半を経費にする)
  • 本業の会社員としての支出を副業の経費に入れる
  • 領収書や記録がなく、何の支出か説明できない
  • 同じ支出を二重に計上する

不適切な経費計上が見つかると、経費が否認されて本来の税額との差額を納めるだけでなく、過少申告加算税や延滞税などが課される場合があります。迷う支出は無理に経費にせず、税務署や税理士に相談しましょう。

よくある質問

経費は売上の何%までなら認められますか?

「何%までなら大丈夫」という基準はありません。経費になるかどうかは割合ではなく、一つひとつの支出が業務に必要だったか、その根拠を説明できるかで判断されます。売上に対して経費が極端に多い場合は、内容を説明できるよう記録を整えておきましょう。

副業がアルバイト(給与)の場合も経費を引けますか?

副業がアルバイトやパートで給与として支払われている場合、その所得は給与所得です。給与所得は個別の経費を差し引くのではなく、給与所得控除で概算的に経費が考慮される仕組みのため、この記事で紹介した経費計上は基本的に当てはまりません。経費を差し引けるのは、業務委託や販売などで得た雑所得・事業所得の場合です。

開業前や副業を始める前に買ったものは経費になりますか?

事業所得として開業する場合、開業準備のためにかかった費用は「開業費」として扱える場合があります。雑所得の場合も、副業の業務に直接必要な支出であれば経費として検討できますが、私用で以前から使っていたものを後から経費にするのは難しいと考えましょう。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください。

クレジットカードの明細だけで領収書の代わりになりますか?

カードの利用明細は支払いの事実を示す資料になりますが、何を買ったのかまでは読み取れないことがあります。購入内容がわかるレシートや注文確認メール、請求書もあわせて保存しておくのが安全です。

経費を差し引いた所得が20万円以下なら、何もしなくていいですか?

所得税の確定申告が不要になる場合でも、住民税の申告は必要です。お住まいの市区町村に住民税の申告をしましょう。また、医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする場合は、20万円以下の副業所得も含めて申告します。住民税の仕組みは副業の住民税で詳しく解説しています。

経費を多く計上すると会社にバレにくくなりますか?

経費を正しく計上すれば所得が減り、結果として住民税額の増え方も小さくなりますが、経費はあくまで実態に基づいて計上するものです。会社に知られる仕組みと対策は会社にバレない方法で解説しています。そもそも副業は就業規則に沿って行うことが前提です(副業禁止・就業規則)。

まとめ

副業の経費は「業務との関連性」と「説明できる根拠」がそろって初めて認められます。最後にポイントを整理します。

  • 経費にできるのは、副業の収入を得るために必要だった支出
  • 私生活と共用する支出は、面積・時間などの根拠をもとに家事按分する
  • 税金・社会保険料・罰金・本業のための支出は経費にならない
  • 10万円・20万円・30万円(令和8年4月1日以後取得分は40万円)の金額ルールで備品の計上方法が変わり、少額減価償却資産の特例は青色申告者向け
  • 雑所得の赤字は給与所得と損益通算できない
  • 領収書・明細・按分の根拠を、電子データも含めて保存する

次にやること:まずは副業用の口座とカードを分け、今年の支出を一覧にしてみましょう。申告の流れは副業の確定申告、副業全体の進め方は副業の始め方、自分に合う副業選びは会社員におすすめの副業一覧をご覧ください。

本記事は一般的な制度の解説であり、個別の税務判断を行うものではありません。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。参考:国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人、国税庁 No.2210 必要経費の知識、中小企業庁 少額減価償却資産の特例

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