※本記事は2026年10月時点の情報です。制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
副業を始めると、多くの会社員が最初につまずくのが「確定申告って自分も必要なの?」という疑問です。よく聞く「20万円ルール」も、中身を正しく理解していないと申告漏れや思わぬ追徴につながります。
- 副業の稼ぎが20万円以下なら、本当に何もしなくていいの?
- 「20万円」は売上のこと?それとも利益のこと?
- 確定申告のやり方やe-Taxの手順がわからない
結論から言うと、20万円ルールは「収入(売上)」ではなく「所得(収入−経費)」で判定し、所得税の確定申告が不要でも住民税の申告は別途必要です。また、医療費控除やふるさと納税で確定申告をする年は、20万円以下の副業所得も含めて申告しなければなりません。
この記事でわかること
- 副業の確定申告が必要かどうかの判定フロー
- 20万円以下でも申告が必要・申告した方がよいケース
- 雑所得と事業所得の違い(令和4年の通達改正のポイント)
- 必要書類とe-Taxでの申告手順
- 2026年時点で知っておきたい税制改正(178万円の壁・青色申告特別控除の見直し予定)
- 申告しなかった場合のペナルティ
住民税の手続きや会社への通知の仕組みは、副業の住民税ガイドで詳しく解説しています。そもそも副業が就業規則でどう扱われるかは副業禁止・就業規則の解説記事もあわせてご覧ください。
副業の確定申告「20万円ルール」とは
国税庁のタックスアンサー(No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)では、給与を1か所から受けていて年末調整を受けている会社員について、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合は確定申告が必要とされています。これが一般に「20万円ルール」と呼ばれるものです。
参考:国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
判定するのは「収入」ではなく「所得」
ここで最も多い誤解が「売上が20万円を超えたら申告」という理解です。判定に使うのは所得=収入(売上)−必要経費です。たとえば副業の売上が50万円でも、仕事に使ったソフト代・通信費・外注費などの経費が35万円なら、所得は15万円となり、所得税の確定申告は原則不要になります(ただし住民税の申告は必要です)。
| 項目 | 例A | 例B |
|---|---|---|
| 副業の売上(収入) | 50万円 | 50万円 |
| 必要経費 | 35万円 | 10万円 |
| 所得(収入−経費) | 15万円 | 40万円 |
| 所得税の確定申告 | 原則不要(住民税申告は必要) | 必要 |
※上表は説明のための例です。
20万円ルールの対象になる人・ならない人
20万円ルールは「年末調整を受けている給与所得者」向けの特例的な扱いです。次のような人は前提が異なるため注意してください。
- 給与を2か所以上から受けている人(副業がアルバイト等の給与):年末調整をされなかった給与の収入と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると申告が必要
- 給与の年間収入が2,000万円を超える人:年末調整の対象外のため、副業の金額にかかわらず確定申告が必要
- フリーランス・個人事業主(給与所得者でない人):20万円ルールは適用されず、所得が基礎控除などを上回れば申告が必要
【判定フロー】副業の確定申告が必要かチェック
自分が申告対象かどうかは、次の順番で確認すると迷いません。
- 本業の給与は1か所で、年末調整を受けているか? → いいえ(給与2か所以上・年収2,000万円超など)の場合は、No.1900の他の要件で判定(多くの場合申告が必要)
- 副業は「給与(アルバイト・パート)」か? → はい の場合、副業先の給与収入+その他の所得の合計が20万円超なら申告が必要
- 副業(業務委託・物販・ブログ等)の所得(収入−経費)を年間で合計すると20万円を超えるか? → はい なら確定申告が必要
- 20万円以下でも、医療費控除・ふるさと納税(6自治体以上)・住宅ローン控除の初年度などで確定申告をするか? → はい なら副業所得も含めて申告が必要
- 上記すべて該当しない → 所得税の確定申告は不要。ただし住民税の申告は市区町村へ必要
| あなたの状況 | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 副業所得が20万円超 | 必要 | 確定申告をすれば不要(自動連携) |
| 副業所得が20万円以下・他に申告理由なし | 不要 | 必要 |
| 副業所得20万円以下だが医療費控除等で確定申告する | 必要(副業所得も含める) | 確定申告をすれば不要 |
| 源泉徴収された報酬があり還付を受けたい | 任意(した方がよい) | 確定申告をすれば不要 |
「所得」には副業以外の所得も合算します。たとえば副業の所得が12万円でも、ほかにほかに個人年金の雑所得や、確定申告不要制度を選ばない株式の配当などがあり、合計が20万円を超えれば申告対象です。
20万円以下でも申告が必要・申告した方がよいケース
「20万円以下だから何もしなくていい」とは限りません。代表的なケースを整理します。
確定申告が必要になるケース
- 医療費控除を受ける:確定申告をする以上、20万円以下の副業所得も含めてすべての所得を申告します
- ふるさと納税でワンストップ特例が使えない:寄附先が6自治体以上、またはほかの理由で確定申告をする場合
- 住宅ローン控除の初年度:1年目は確定申告が必要
- 副業がアルバイト給与:副業先の給与収入(経費は引けません)とその他所得の合計が20万円超
「20万円以下なら申告不要」というのは、確定申告をしない場合に限って副業所得を申告しなくてよいという扱いです。確定申告書を出す年は、所得をすべて記載する必要がある点に注意しましょう。
申告した方がトクになるケース
- 報酬から源泉徴収(10.21%)されている:デザイン・原稿料・講演料などで源泉徴収されている場合、確定申告で税金が戻る可能性があります
- 事業所得で赤字が出た:事業所得の赤字は給与所得と損益通算できる場合があります(雑所得の赤字は給与と通算できません)
- 青色申告をしている:青色申告特別控除や赤字の繰越しは、確定申告をしてはじめて適用されます
住民税の申告は「別」と考える
所得税の20万円ルールは所得税だけの話で、住民税にはこの特例がありません。確定申告をしない場合は、お住まいの市区町村に住民税の申告をする必要があります。確定申告をすれば、その情報が市区町村に送られるため、住民税の申告を別途行う必要はありません。詳しくは副業の住民税の記事で解説しています。
副業の所得区分:雑所得と事業所得の違い
副業の所得は、内容によって「給与所得」「雑所得」「事業所得」などに分かれます。区分によって経費の扱いや使える特典が大きく変わります。
| 項目 | 給与所得 | 雑所得(業務に係るもの) | 事業所得 |
|---|---|---|---|
| 典型例 | アルバイト・パート | 単発の業務委託・小規模なブログ収益など | 継続的・反復的に営む事業 |
| 経費 | 引けない(給与所得控除) | 引ける | 引ける |
| 給与との損益通算 | ― | 不可 | 可 |
| 青色申告 | 不可 | 不可 | 可(承認申請が必要) |
| 帳簿 | ― | 原則不要(一定規模以上は書類保存義務あり) | 必要 |
令和4年10月の通達改正のポイント
事業所得か雑所得かの判断について、国税庁は令和4年10月に所得税基本通達を改正しました。ポイントは次のとおりです。
- 事業所得か雑所得かは、その所得を得る活動が社会通念上「事業」と呼べる規模・継続性があるかで判定する
- その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、原則として「業務に係る雑所得」とする
- ただし、帳簿書類の保存がなくても、収入金額が300万円を超え、事業と認められる事実がある場合は事業所得になり得る
よく見かける「副業の収入が300万円以下なら一律で雑所得」という説明は誤りです。改正前の案では300万円で線引きする内容が示されましたが、最終的な通達では採用されていません。300万円以下でも、帳簿を付けて事業として営んでいれば事業所得になり得ます。
どちらにすべきか迷ったら
副業を本格的に続けるつもりなら、開業届を出し、帳簿を付けて事業として運営するのが基本です。一方で、年に数件の単発案件だけなら雑所得として申告するのが自然です。判断が難しい場合は税務署や税理士に確認しましょう。
副業の確定申告に必要な書類チェックリスト
申告前にそろえておきたいものをリストにしました。
- 本業の源泉徴収票(年末調整後に会社から交付)
- 副業の売上がわかる資料(請求書控え、プラットフォームの売上明細、入金記録)
- 支払調書(取引先から届く場合。届かなくても申告は必要)
- 経費の領収書・レシート、クレジットカード明細
- 事業所得の場合は帳簿と収支内訳書または青色申告決算書
- マイナンバーカード(e-Taxの場合)、または本人確認書類
- 控除を受ける場合:医療費の明細書、寄附金受領証明書、保険料控除証明書など
- 還付金の受取口座
副業の経費や記帳を効率化したい場合は、記帳代行の解説記事やフリーランスの節税の記事も参考になります。
e-Taxで副業の確定申告をする手順
会社員の副業なら、自宅から申告できるe-Tax(電子申告)が便利です。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に沿って入力するだけで申告書が作れます。
申告期間
所得税の確定申告期間は、原則として翌年2月16日〜3月15日です(土日祝日の関係でずれる年があります)。2026年分(令和8年分)は2027年3月15日が期限の目安です。還付申告のみの場合は、翌年1月1日から5年間提出できます。正確な日程は国税庁の発表で確認してください。
e-Taxでの申告ステップ
- 準備:マイナンバーカードと、読み取りに対応したスマートフォン(またはICカードリーダー)を用意。源泉徴収票・副業の売上と経費の集計を済ませる
- 作成コーナーにアクセス:確定申告書等作成コーナーで「作成開始」を選び、提出方法で「e-Tax(マイナンバーカード方式)」を選択
- マイナポータル連携(任意):連携すると、源泉徴収票(会社が対応している場合)や控除証明書の一部を自動取得できる
- 給与所得を入力:源泉徴収票の金額(支払金額・源泉徴収税額など)を入力
- 副業の所得を入力:雑所得なら「業務」の区分で収入と経費を、事業所得なら収支内訳書・青色申告決算書を先に作成して入力
- 住民税の徴収方法を選ぶ:第二表の「住民税・事業税に関する事項」で、給与以外の所得に係る住民税を「自分で納付(普通徴収)」にするか選択
- 控除を入力して送信:医療費控除などがあれば入力し、内容を確認してマイナンバーカードで電子署名して送信
- 納付:納税額がある場合は3月15日(期限)までに、振替納税・ダイレクト納付・クレジットカード・スマホアプリ決済などで納付
参考:国税庁 e-Tax
青色申告との関係
青色申告は、事業所得・不動産所得・山林所得がある人だけが選べる制度です。副業が雑所得の場合は青色申告はできません。事業所得として副業を営むなら、次の手続きで青色申告を始められます。
- 開業届:事業を開始した年分の確定申告期限までに税務署へ提出(国税庁の現行案内)
- 青色申告承認申請書:原則として青色申告をしたい年の3月15日まで。1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内
青色申告特別控除の金額(2026年分まで)
| 控除額 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記で記帳+e-Taxで申告(または優良な電子帳簿保存) |
| 55万円 | 複式簿記で記帳+書面で期限内申告 |
| 10万円 | 簡易な記帳でも可 |
青色申告にすると控除のほか、赤字を3年間繰り越せる、家族への給与を経費にできる(届出が必要)などのメリットがあります。
2026年に押さえたい税制改正のポイント
「178万円の壁」の概要
令和7年分から、基礎控除の本則が58万円、給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げられ、いわゆる「160万円の壁」となりました。さらに令和8年度税制改正により、令和8年分・9年分は基礎控除の本則が62万円、給与所得控除の最低保障額が本則69万円(令和8・9年分は特例の上乗せで74万円)に引き上げられ、時限的な上乗せも含めて所得税がかからない給与年収のラインは178万円になります。令和8年分は年末調整で精算される予定です。
基礎控除の上乗せ額は所得の金額によって段階的に変わるため、副業で所得が増える人は控除額が変わる可能性があります。詳細は財務省の税制改正の解説で確認してください。
令和9年分から青色申告特別控除の見直し(予定)
令和8年度税制改正では、令和9年分から青色申告特別控除が見直される予定です。書面での提出は10万円に縮小され、一定の電子要件(e-Taxや電子帳簿保存など)を満たすと75万円に拡充される方向です。これから副業を事業化するなら、最初から会計ソフトとe-Taxで運用しておくと移行がスムーズです。具体的な要件は今後の国税庁の案内で確認しましょう。
インボイス制度の2割特例は2026年分まで
免税事業者からインボイス発行事業者になった個人の「2割特例」は、令和8年(2026年)分までの適用です。個人事業者には令和9・10年分の「3割特例」が設けられる予定です。副業でインボイス登録をしている人は、2027年分以降の消費税計算方法を早めに確認しておきましょう。
確定申告をしないとどうなる?無申告のペナルティ
申告が必要なのに期限までに申告しなかった場合、本来の税金に加えて次のような負担が生じます。
無申告加算税
| 納付すべき税額のうち | 税率 |
|---|---|
| 50万円以下の部分 | 15% |
| 50万円超300万円以下の部分 | 20% |
| 300万円超の部分 | 30%(令和6年1月1日以後に申告期限が到来するもの) |
- 税務調査の通知前に自主的に期限後申告した場合は5%に軽減
- 期限から1か月以内に自主的に申告し、全額を期限内に納付しているなど一定の要件を満たせば、課されない場合がある
- 悪質な所得隠しと判断されると、より重い重加算税の対象になる
延滞税
納付が遅れた日数に応じて、利息にあたる延滞税がかかります。割合は毎年見直され、令和8年中は納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、それ以降は年9.1%です。早く申告・納付するほど負担は小さくなります。
住民税・会社への影響
所得税を申告していなくても、取引先から支払調書等が提出されていれば後から把握されることがあります。後日まとめて住民税が課税されると、会社の給与天引き額が急に増えて副業に気づかれるきっかけにもなります。会社にバレない副業の進め方もあわせて確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 副業の所得が20万円以下なら、本当に何もしなくていい?
A. 所得税の確定申告は不要になるケースが多いですが、住民税の申告は必要です。また、医療費控除などで確定申告をする年は、副業所得も含めて申告します。
Q. 20万円は1年間の合計?複数の副業がある場合は?
A. 1月1日〜12月31日の1年間で、給与・退職所得以外の所得をすべて合計して判定します。副業が複数あれば、それぞれの所得を合算します。
Q. ポイントサイトやフリマアプリの売上も含まれる?
A. 生活用動産(自分が使っていた衣類・家具など)の売却は原則非課税です。一方、仕入れて販売する転売や、継続的な副業収入は所得に含まれます。ポイントの扱いは内容によって異なるため、迷う場合は税務署に確認してください。
Q. 経費にできるものは?
A. 副業の収入を得るために直接必要な支出が対象です。例として、業務用のソフトウェア代、通信費の業務利用分、資料代、外注費などがあります。私用と兼ねる支出は、業務で使った割合で按分します。
Q. 確定申告をすると会社に副業がバレる?
A. 所得税の確定申告自体が会社に通知されることはありません。会社が気づく主なきっかけは住民税です。業務委託などの副業なら、第二表で住民税を「自分で納付(普通徴収)」にする方法があります。詳しくは副業の住民税の記事をご覧ください。
Q. 申告期限を過ぎてしまったら?
A. 気づいた時点でできるだけ早く期限後申告をしましょう。自主的に申告すれば無申告加算税が軽減され、延滞税も日数に応じて少なくなります。
まとめ
- 20万円ルールは「所得(収入−経費)」で判定する
- 20万円以下でも住民税の申告は必要、確定申告をする年は副業所得も含める
- 所得区分は社会通念で判定。帳簿がなければ原則雑所得、「300万円以下は一律雑所得」は誤り
- e-Taxなら自宅から申告でき、第二表で住民税の徴収方法も選べる
- 2026年は178万円の壁、令和9年分からの青色申告特別控除の見直し(予定)に注目
- 無申告は無申告加算税・延滞税の対象。早めの申告が最善
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※本記事は一般的な制度の解説です。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。
