※本記事は2026年10月時点の情報です。制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
「公務員は副業禁止」と聞いたことがある方は多いと思います。一方で、近年は公務員の兼業を認める方向の見直しも進んでいます。公務員として働く方からは、こんな声がよく聞かれます。
- 公務員の副業はどこまでがNGで、どこからが許可を取ればできるのかを知りたい
- 不動産の賃貸や、趣味を活かした活動なら許可なしでできるのか気になる
- 最近の兼業ルールの見直しで、何が変わったのかを正確に知りたい
結論からお伝えすると、公務員の副業は「全面禁止」ではなく、法律にもとづく「許可(承認)制」です。国家公務員は国家公務員法103条・104条と人事院規則、地方公務員は地方公務員法38条と各自治体の基準にしたがい、事前に許可を得れば認められる場合があります。ただし判断は所属組織ごとに行われるため、実際に始める前には必ず所属の人事担当に確認してください。
この記事でわかること
- 国家公務員・地方公務員それぞれの副業(兼業)ルールの基本
- 許可が必要になる範囲と、不動産賃貸などの規模の目安
- 2025〜2026年の人事院・総務省による兼業制度の見直しのポイント
- 許可申請の流れと、無許可で副業をした場合の懲戒リスク
なお、民間企業の会社員の副業ルールについては副業禁止・就業規則の考え方で解説しています。副業全般の基本は副業の始め方もあわせてご覧ください。
公務員の副業は「禁止」ではなく「許可制」
会社員の場合、副業を全面的に禁止する法律はなく、各社の就業規則でルールが決まります。一方、公務員は法律によって兼業が制限されている点が大きく異なります。
公務員の兼業が制限される理由
公務員の兼業が制限されている主な理由は、次の3つに整理できます。
- 職務専念義務:勤務時間中は職務に専念する義務があり、兼業によって本来の職務の能率が落ちることを防ぐ
- 公務の公正性:兼業先との利害関係によって、職務の公正な執行が損なわれることを防ぐ
- 公務への信頼(品位):公務員としての信用や品位を損なう活動を防ぐ
許可(承認)の判断も、基本的にはこの3つの観点から行われます。つまり「この兼業は職務に支障がなく、利害関係もなく、信用を損なわないか」が問われると考えるとわかりやすいでしょう。
国家公務員と地方公務員で根拠となる法律が違う
国家公務員と地方公務員では、根拠となる法律と許可の仕組みが異なります。
| 項目 | 国家公務員(一般職) | 地方公務員(一般職) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 国家公務員法103条・104条、人事院規則14-8 など | 地方公務員法38条、各自治体の人事委員会規則等 |
| 営利企業の役員等との兼業 | 原則禁止(人事院規則に定める場合に承認) | 任命権者の許可が必要 |
| 自ら営利企業を営む(自営兼業) | 原則禁止(承認を得た場合のみ可) | 任命権者の許可が必要 |
| 報酬を得て他の事業・事務に従事 | 内閣総理大臣および所轄庁の長の許可が必要 | 任命権者の許可が必要 |
| 許可(承認)の基準 | 人事院規則・運用通知などで定める | 各自治体が基準を定める(国の考え方を参考にする自治体も多い) |
| 無許可の場合 | 懲戒処分の対象になり得る | 懲戒処分の対象になり得る |
※自衛隊員など特別職の公務員には、それぞれ別のルールがあります。
国家公務員の副業ルールの基本
国家公務員(一般職)の兼業は、主に国家公務員法103条と104条で規定されています。条文はe-Gov法令検索「国家公務員法」で確認できます。
国家公務員法103条:営利企業の役員兼業・自営の制限
103条では、職員が商業・工業・金融業などの営利を目的とする私企業の役員などを兼ねること、または自ら営利企業を営むことを制限しています。ただし、人事院規則の定めるところにより承認を得た場合には、この制限は適用されません。この承認の詳細は人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)とその運用通知で定められています。
「自ら営利企業を営む」とは、たとえば一定規模以上の不動産賃貸や、事業として物品を販売することなどを指します。どの規模から「自営」に当たるかの目安は、後ほど解説します。
国家公務員法104条:報酬を得る兼業の許可
104条では、職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員や顧問などを兼ねたり、その他の事業や事務に従事したりする場合には、内閣総理大臣および所轄庁の長の許可が必要とされています。たとえば、非営利団体の役員として報酬を受ける場合や、継続的に報酬を得て講師などを務める場合が想定されます。
人事院の資料では、報酬を得る兼業の許可基準の考え方として、兼業に従事する時間の目安を「週8時間または月30時間以内、勤務時間が割り振られた日は1日3時間以内」としています。
民間企業に雇われるアルバイトは原則難しい
国家公務員が民間企業の従業員として雇われて働く兼業(いわゆるアルバイト)は、現行の運用では原則として認められにくいとされています。総務省の通知でも、地方公務員については「国家公務員とは異なり」、基本原則を満たせば営利企業の従業員との兼業も任命権者の判断で認め得る、という整理が示されています。国家公務員がアルバイトを検討する場合は、まず所属の人事担当に相談してください。
地方公務員の副業ルールの基本
地方公務員(一般職)の兼業は、地方公務員法38条で規定されています。条文はe-Gov法令検索「地方公務員法」で確認できます。
地方公務員法38条:営利企業への従事等の制限
38条では、任命権者の許可を受けなければ、次のことをしてはならないと定めています。
- 営利を目的とする私企業などの役員などの地位を兼ねること
- 自ら営利を目的とする私企業を営むこと
- 報酬を得て、いかなる事業・事務にも従事すること
国家公務員と違い、許可の権限は各自治体の任命権者(知事、市町村長、教育委員会など)にあります。そのため、具体的な許可基準や申請方法は自治体ごとに異なります。
パートタイムの会計年度任用職員は扱いが異なる
地方公務員法38条には、一部の非常勤職員を許可制の対象外とするただし書きがあり、パートタイムの会計年度任用職員は、この許可制の対象外とされています。ただし、職務専念義務や信用失墜行為の禁止などの規律は適用されるほか、自治体によっては兼業の届出を求めている場合があります。フルタイムの会計年度任用職員は許可制の対象です。自分の任用形態での扱いは、必ず所属に確認しましょう。
自治体ごとの許可基準を確認する
総務省は、各自治体に対し、兼業の許可基準を具体的に設定し、庁内外に公表するよう求めています。所属自治体の例規集や職員向けポータル、人事課の案内などに許可基準が掲載されていることがあるので、まずは確認してみましょう。
許可なしで認められやすい例と、規模の目安
公務員でも、法律上の「兼業」に当たらない活動や、「自営」に当たらない規模の活動は、許可(承認)が不要とされる場合があります。ただし、最終的な判断は所属組織が行うため、自己判断で始めずに確認することが大切です。
一定規模以下の不動産賃貸・駐車場賃貸
国家公務員の場合、人事院規則14-8の運用通知で、不動産や駐車場の賃貸が「自ら営利企業を営むこと」に当たる基準が示されています。主な基準は次のとおりで、いずれかに当たる場合は「自営」として承認が必要になります。
| 区分 | 「自営」に当たる主な基準(人事院規則14-8の運用通知) |
|---|---|
| 独立家屋の賃貸 | 独立家屋の数が5棟以上 |
| アパート・マンション等の賃貸 | 独立的に区画された部分の数が10室以上 |
| 土地の賃貸 | 賃貸契約の件数が10件以上 |
| 駐車場の賃貸 | 建築物や機械設備を設けたもの、または駐車台数が10台以上 |
| 賃貸料収入 | 年額1,000万円以上(建物の賃貸のみで床面積の合計が600平方メートル未満の場合を除く) |
| 太陽光電気の販売 | 発電設備の定格出力が50キロワット以上 |
※上記は2026年10月時点で人事院が公表している運用通知の内容を要約したものです。正確な文言・最新の改正は人事院「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」でご確認ください。
これらの基準を下回る規模であれば、原則として「自営」には当たらないと整理されています。ただし、管理会社に業務を委ねていない場合や、職務と利害関係がある場合などは別の問題が生じることもあるため、所属に確認しましょう。地方公務員の場合は、各自治体が国の基準を参考に独自の基準を定めていることが多いので、所属自治体の基準を確認してください。
兼業に当たらないとされることが多い活動
次のような活動は、一般的に「兼業」に当たらない、または許可の対象外と整理されることが多いものです。ただし、内容や頻度、報酬の有無によって扱いが変わるため、迷ったら確認するのが安全です。
- 株式や投資信託などによる個人の資産運用(職務上の情報を使った取引は別の問題になります)
- 報酬を受けないボランティア活動
- 継続性のない単発の講演や原稿執筆に対する謝礼(所属によっては届出が必要な場合があります)
なお、人事院の資料では、兼業とは継続的・定期的に行う業務を指すとされています。単発かどうかの線引きは個別の判断になるため、継続する可能性がある場合は事前に相談しておきましょう。
「許可不要」と自己判断するのは危険
「規模が小さいから大丈夫」「単発だから大丈夫」と思っていても、所属組織の判断と異なれば、無許可の兼業として問題になる可能性があります。少しでも迷う場合は、始める前に所属の人事担当に確認してください。
2025〜2026年の兼業制度見直しのポイント
公務員の兼業制度は、職員の自律的なキャリア形成や人材確保の観点から、ここ数年で見直しが進んでいます。代表的な動きを紹介します。
人事院:自営兼業の承認対象を拡大(2026年4月1日施行)
人事院は2025年12月19日、国家公務員の自営兼業制度の見直しを発表しました。従来、自営兼業として承認の対象になっていたのは、不動産等の賃貸、太陽光電気の販売、家業として継承した事業(農業など)といった限定的なものでした。見直しにより、2026年4月1日から次の2つの事業も承認可能になっています。
| 新たな類型 | 事業の例(人事院の資料より) |
|---|---|
| 職員の有する知識・技能をいかした事業 | 自作の物品・絵画・写真・音楽の販売、スポーツや芸術の教室での指導、自費出版など |
| 社会貢献に資する事業 | 地域振興に係る催しの主催、高齢者の買い物代行などの生活支援など |
人事院の運用通知やQ&Aによると、これらの承認には主に次のような要件があります。
- 所得税法上の開業届を提出して行うこと(承認を得てから事業を開始する)
- 目的、業務内容、営業日・営業時間、収入の予定年額などを記載した事業計画書を作成すること
- 職員の官職と事業との間に特別な利害関係がないこと
- 原則として週休日に行うなど、職務遂行に支障がないこと
- 公務の公正性・信頼性を損なわないこと
また、承認期間は2年を超えない期間とされ、続ける場合は再承認が必要です。人事院のQ&Aでは、経費を差し引く前の年間収入の見込みが20万円を超える場合は、規模の観点から「自営」と判断し得るとの考え方も示されています。対象となる類型に当てはまっても必ず承認されるわけではなく、個別に判断される点に注意が必要です。詳細は人事院「自営兼業制度の見直しについて」で確認できます。
総務省:地方公務員の兼業許可基準の設定・公表を要請(2025年6月)
総務省は2025年6月11日付で、各自治体に「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について」という通知を出しました。主なポイントは次のとおりです。
- 各自治体が、地域の実情に合わせた具体的な許可基準を設定し、庁内外に公表すること
- 兼業時間の上限の目安として、国の基準(週8時間・月30時間、勤務日は1日3時間)を参考にできること
- 自営兼業についても、国の基準にある「家業の継承」に限らず、書道教室の運営やヨガインストラクターなど、職員の趣味や特技を活かした活動も認め得ること
- 許可に有効期間を設け、定期的に実態を把握すること
- 兼業は職員の自発的な活動であり、意に反する動員的な運用は許されないこと
この通知は技術的助言という位置づけで、実際の運用は各自治体に委ねられています。所属自治体がどのような基準を設けているかを確認することが重要です。通知の内容は総務省の通知(PDF)で確認できます。
副業(兼業)の許可申請の流れ
許可(承認)申請の具体的な様式や手順は、所属組織によって異なります。ここでは一般的な流れを紹介します。
ステップ1:所属の規程と許可基準を確認する
まず、所属組織の兼業に関する規程や許可基準を確認します。国家公務員であれば各府省等の案内、地方公務員であれば所属自治体の例規や人事課の案内が手がかりになります。
ステップ2:人事担当・上司に事前相談する
いきなり申請書を出すのではなく、兼業の内容、頻度、報酬、兼業先との関係などを人事担当や上司に事前相談します。事前相談の段階で、許可の見込みや必要書類がわかることが多いです。自営兼業の場合、人事院のQ&Aでは開業届は承認相談の後に提出するという順番が示されています。
ステップ3:申請書・事業計画書を作成して提出する
所定の申請書に、兼業先の名称、業務内容、従事する日時・時間数、報酬の額などを記入します。自営兼業の場合は、事業計画書の提出が必要になるのが一般的です。
ステップ4:許可(承認)を得てから開始する
許可(承認)が下りてから兼業を始めます。申請中に始めてしまうと、無許可の兼業と判断されるおそれがあります。
ステップ5:内容が変わったら再申請・報告する
許可には有効期間が設けられていることが多く、期間が終わる前に更新の手続きが必要です。また、業務内容や時間、収入が大きく変わった場合や、人事異動で職務と兼業先の関係が変わった場合は、再度の許可手続きが必要になることがあります。
許可申請前のチェックリスト
- 兼業の内容が、職務と利害関係のある相手との取引になっていないか
- 勤務時間外(原則として週休日など)に行える内容か
- 1週間・1か月あたりの兼業時間が、所属の基準の範囲に収まるか
- 公務員としての信用や品位を損なうおそれのない内容か
- 収入の見込み額と、確定申告の要否を把握しているか
- 所属の申請様式・事業計画書の書き方を確認したか
無許可の副業による懲戒リスク
許可が必要な兼業を無許可で行った場合、懲戒処分の対象になり得ます。会社員の副業以上に、慎重な対応が求められます。
懲戒処分の種類
国家公務員法82条、地方公務員法29条では、法令違反などがあった場合の懲戒処分として、免職、停職、減給、戒告を定めています。どの処分になるかは、兼業の内容、期間、収入の額、職務への影響などを踏まえて個別に判断されます。
罰則の対象になる場合もある
人事院のQ&Aでは、承認を得ずに自営を行った場合、懲戒処分の対象となるほか、国家公務員法の罰則の対象となる場合があるとされています。
「知られない」前提で行わない
会社員の副業では、住民税の納付方法などが話題になることがありますが、公務員の場合は法律にもとづく許可制である以上、「知られないようにする」前提で副業を行うべきではありません。気になる副業があるなら、正面から許可を取る方法を考えましょう。住民税や確定申告の仕組みについては副業の住民税、副業の確定申告で解説しています。
公務員が副業を検討するときの考え方
最後に、公務員が副業を検討する際の考え方をまとめます。
| 検討したいこと | 考え方 |
|---|---|
| 不動産を相続して賃貸したい | 規模の基準を確認し、基準以上なら承認申請。管理会社への委託も検討 |
| 趣味・特技を活かして作品販売や教室をしたい | 国家公務員は2026年4月からの新類型の対象になり得る。地方公務員は所属自治体の基準を確認 |
| 地域活動やNPOで報酬を得たい | 報酬を得る兼業として許可が必要か確認 |
| 将来の転職・独立に向けて経験を積みたい | 許可を得られる範囲で、無報酬の活動や学習から始めるのも一つの方法 |
退職後のキャリアや、民間での働き方を考えたい方は、パラレルキャリアとはも参考になります。
よくある質問
公務員は副業が完全に禁止されているのですか?
完全に禁止されているわけではありません。国家公務員は国家公務員法103条・104条、地方公務員は地方公務員法38条にもとづき、許可(承認)を得れば兼業が認められる場合があります。許可の可否は所属組織が個別に判断するため、所属の人事担当に確認してください。
公務員がブログやYouTubeで収入を得てもよいですか?
内容や規模によって扱いが異なります。国家公務員については、2026年4月施行の自営兼業の見直しにより、知識・技能をいかした事業が承認対象になりました。ブログや動画配信の広告収入がどう扱われるかは個別の判断になるため、始める前に所属に相談しましょう。
親から相続したアパートを貸すのに許可は必要ですか?
国家公務員の場合、独立的に区画された部分が10室以上、賃貸料収入が年額1,000万円以上(建物の賃貸のみで床面積の合計が600平方メートル未満の場合を除く)などの基準に当たると「自営」となり承認が必要です。基準を下回る場合でも、所属への確認をおすすめします。地方公務員は自治体ごとの基準を確認してください。
地方公務員の兼業許可の基準はどこで確認できますか?
所属自治体の例規集、職員向けの通知やポータル、人事課の案内などで確認できる場合があります。総務省は各自治体に許可基準の設定と公表を求めているため、公表している自治体も増えています。見つからない場合は人事課に問い合わせましょう。
公務員が副業で収入を得たら確定申告は必要ですか?
公務員も給与所得者であり、税金の基本的なルールは会社員と同様です。給与を1か所から受け取り年末調整を受けている場合、給与以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。
まとめ
公務員の副業は「禁止」ではなく、法律にもとづく「許可制」です。要点を振り返ります。
- 国家公務員は国家公務員法103条(役員兼業・自営)・104条(報酬を得る兼業)、地方公務員は地方公務員法38条で兼業が制限されている
- 国家公務員の不動産賃貸は、5棟以上・10室以上・賃料年額1,000万円以上などの基準に当たると「自営」として承認が必要
- 人事院の見直しで、2026年4月1日から「知識・技能をいかした事業」「社会貢献に資する事業」の自営兼業が承認可能に
- 総務省は2025年6月、地方公務員の兼業許可基準の設定・公表を各自治体に求めた
- 許可は事前相談→申請→許可後に開始。無許可の兼業は懲戒処分の対象になり得る
- 判断は所属組織ごとに異なるため、必ず所属の人事担当に確認する
次にやること:許可の見込みが立ったら、副業の始め方で準備の流れを確認し、会社員におすすめの副業で自分の知識・技能を活かせる副業を探してみましょう。税金の手続きは副業の確定申告で確認できます。
